企業の価値をどう判断するか

企業の価値は、なにで判断されるのでしょう?

 

売上高、利益率、総資産規模、市場シェア、社会貢献度など、さまざまな基準が考えられますが、これらは企業の価値の一側面を測る基準でしかありません。
もちろん、何を評価したいのかによって選ばれる基準は変わってきますので、特定の基準が企業の価値を絶対的に決めるものだということを、ここでお話したい訳ではありません。

 

ですが、漠然と企業の価値と言われると、なんとなくですが「企業の総合的な実力」を問われているイメージがあります。その「総合的な実力」とは、営利目的の企業であれば「どれだけ継続して利益を上げ続ける力があるか」ではないかと考えます。

利益を上げれば、その一部を株主や従業員に還元することができ、それが消費を刺激します。
また、余剰金で設備投資などを行うことができ、それが市場経済にプラスの効果を与えます。
事業税等の税収にも反映されて公共事業の原資となり、社会貢献にも役立ちます。

ですので、世間一般から企業に最も求められることは、「利益を上げ続けられる」か否かという点ではないでしょうか。これは、必ずしも企業の株価が売上高や総資産等の額に連動せず、ある種の「期待感」によって決まってくることからも示唆されます。

 

それでは、この「利益を上げ続けられる」かどうかを客観的に判断することは可能でしょうか。

 

利益を生み出す源泉は、企業の「資産」であることについては異論がないと思います。
ということは、その企業にどれだけの「資産」があるかをチェックし、その保有資産の価値の総計が利益を生み出す潜在能力を表していると考えられます。

では、「資産」にはどのようなものがあるのでしょうか。

一般に経営における「資産」というと、会計上の「資産」、すなわち固定資産(土地、建物、設備等)、流動資産(預金、有価証券、手形、売掛金等)、繰延資産(開発費、社債発行費等)が挙げられます。
これらは”目に見える”もの(=「有形資産」)であり、価値を一義的に見積もることができるものです。

しかしながら、企業の生み出す利益は、「有形資産」だけが源泉となっているのではありません。
実際には「有形資産」が少ないにも関わらず高収益を上げている企業もあれば、多くの「有形資産」があるにも関わらず赤字経営となっている企業もあります。

 

これは、こう考えると理解しやすいかと思います。

「有形資産」は、それのみだとほぼ決まった価値しか生み出しません。たとえば、生産設備があり、それを普通に運用しているだけだと一定の利益しか上げられません。
これを、能力のある人(=人材)が運用したり、組織を変更して効率を上げたり、新技術を投入して生産性を上げたりすることで、劇的に利益の向上が図れます。
逆に「有形資産」を活かしきれず、期待されるだけの利益を生み出すことができないと赤字経営となってしまいます。

このように、「有形資産」以外のなにか別の”目に見えない”もの(=「無形資産」)があり、それが業績に大きく関与していると考えられるのです。

 

この「無形資産」ですが、さらに、知的活動に起因するものと、そうでないものの2種類に区分することができます。
知的活動に起因するものとして、人材、技術、組織力、営業ネットワーク、特許権、ブランドなど、そうでないものとしては、借地権、電話加入権などが挙げられます。
このように列挙してみると、”知的活動に起因する”もののほうが圧倒的に業績に影響を及ぼすと思われるものが揃っています。

 

ところが、こうした「知的活動に起因する資産」を見積もる指標というものは、実はまだ世の中に存在しません。にも関わらず、企業の実力を支える大切な「資産」であることもわかってきています。

 

経済産業省は、これを「知的資産」と呼び、この知的資産を活用した経営を行うことを推奨しはじめました。そしてこの「知的資産」をいかに”見える化”するかという研究が、実際の企業支援を通じて実践的に行われてきております。

 

当コラムでは、今後この「知的資産経営」に関するさまざまな情報をご提供してまいります。