「契約」には強制力があります

当事者間で合意して成立した「契約」

もしこれを守らなかったらどうなってしまうのでしょうか。
最初はその気があったけど、後で気が変わった場合には、無かったことにできるのでしょうか。

 

「契約」は、いったん成立すると、その時点から”強制力”を持つことになります。
この”強制力”は、法律に支えられています。
つまり、「契約」によって当事者に生じた権利については、法律が必ず実現することを保証し、逆に義務については、実施しなかった場合には罰せられるということです。

ですから、「契約」を守らなかった場合には、「法律」つまりそれを体現する「裁判所」によって実現を強制されるか、またはなんらかの代替手段を講じることが命じられます。加えて「債務不履行」などの理由により損害賠償をしなければならない事態に陥ります。

 

そして、いったん成立した「契約」は、特定の条件を満たさない限り勝手に解除することはできません。
「契約」の時点で、相手はそれを実行することを期待している訳で、その期待を裏切ることは「信義誠実」に反するという理由です。これは「信義誠実の原則」といい、民法の重要な原則のひとつです。
気が変わったとか、当初と事情が変わったとか、その程度の自分勝手な理由では、簡単に「契約」を解除することはできません。

もちろん解除ができない訳ではないのですが、客観的に見て妥当と思われる相当な理由が必要です。

 

では、相手が「契約」を守らなかったときに、”どうせ裁判所の力で実施が強制されるのだから”と自力で強制してもいいのでしょうか。
例えば、”なかなか借金を返してくれないから、相手から無理やり借金相当の金額を奪い取る”なんてことは、これは認められません。

法律で保護された権利だからといって、権利者が義務者に直接強制することは「自力救済」と呼ばれ禁止されているのです。
まあ簡単に言うと、勝手に自分でそうした行為をすることを認めてしまうと、「力が正義」という風潮になってしまい社会の秩序を維持するのが大変になるから、ということです。
ですので、強制力を行使するのは、法律にもとづき権威のある裁判所が行うものとされている訳です。

 

余談ですが、家賃を払わないからといって契約を解除し、勝手にアパートの扉の鍵を付け替えると、「自力救済」とみなされて、大家さんは賃貸人から訴えられれば損害賠償を支払うことになります。
ですので、その場合大家さんは、契約の解除とともに裁判所に訴え、強制退去してもらうよう主張しなければならないのです。

 

ただし、裁判所が「契約」にもとづき強制力を行使するためには、まずどのような「契約」だったかを判断することになります。その判断を行ううえでは客観的な証拠が必要となります。
「契約書」は、そういう場面で重要な証拠として扱われます。

大事な約束は「契約書」にするのが一番ということですね。