「知的資産」を「主体」で分類する

「知的資産」を、”誰が、何が”という「主体」に着目して分類すると、以下のようになります。

 

■人的資産

特定個人が持つ知識、経験、ノウハウ、スキル、対応力など、ある特定の個人が主体となる「知的資産」を「人的資産」と呼びます。

人的資産は、その特定個人以外に広げることが困難であるとともに、その特定個人がいなくなると、その企業から失われてしまうというリスクがあります。

 

■構造資産

組織に根付いた企業文化、データベース、ナレッジや、一個人を離れ権利化された特許権など、組織が主体となる「知的資産」を「構造資産」と呼びます。

そのほとんどは、もともと「人的資産」だったものであり、それらが組織で共有化された資産ともいえます。
構造資産は特定個人に依存していないため、横展開がしやすく比較的長く企業に保持されるという特徴があります。

 

■関係資産

顧客との関係、取引関係などのように、企業の対外的な関係に起因する「知的資産」を「関係資産」と呼びます。

関係資産も、もとは特定個人の力による「人的資産」だった場合も多く、その関係を維持、発展させることが組織として価値があると認められはじめて「関係資産」となります。

関係資産は、自社以外の利害関係者との関係で成り立つものであり、なにかのきっかけで突然消失してしまうリスクがあります。

 

このように、主体によって「知的資産」の損失リスクが大きく異なってきますが、この主体自体を変更することも可能なのです。

 

例えば、従業員Aさんが個人的な能力で行っていた営業活動のノウハウを整理しマニュアル化することで、営業部門全体のノウハウとすることができます。

その結果、仮にAさんが企業からいなくなったとしても、Aさんのやり方は組織に残り「知的資産」として活用することが可能となります。

これが「人的資産」の「構造資産」化です。

 

同じく、Bさんの個人的な人脈で成り立っていた取引関係を、企業間で正式に取引契約を締結することで、Bさんに依存することなく「知的資産」として企業が活用することが可能となります。

これが「人的資産」の「関係資産」化です。

 

なにかのきっかけでその「知的資産」を失うと、企業の存続にも関わってきますので、企業としては「人的資産」よりも「構造資産」もしくは「関係資産」であるほうが、損失リスクが低く望ましいのです。

 

もちろん「知的資産」は知的活動に起因しますので、主体が変わればその性質も同一とはいきません。

Aさんの営業ノウハウをマニュアル化しても、CさんがAさんとまったく同じように営業できる訳ではありません。ですが、仮にAさんがいなくなったとしても、Cさんがある程度Aさんと同じような営業活動できるのであれば、企業としてはAさんの営業ノウハウを100%失うという事態にはならずにすむ訳です。

 

このように、「知的資産」を考えるうえで、「主体」で分類することは極めて重要です。