「知的資産」は、ざっくり言うと”企業の利益を生み出すもととなる強み”ですが、いきなり生み出されるわけではなく、そのもととなるモノがあります。
そして大抵は、そのモノも「知的資産」と呼べるモノだったりします。
例えば、”耐久性が他社製品の2倍”という製品があった場合、その強みとなる耐久性を実現できる”製造工程”なり”技術”を持っているはずで、これもまた「知的資産」です。
さらに、その”製造工程”や”技術”を蓄積できたなんらかの要因があるはずで、とある従業員が研修会等に通って習得してきたのだとすれば、そういう”研修会などに積極的に通わせた”というマネジメントが「知的資産」となり得ます。
そして、そもそも研修会に通わせたのは、事業主の意向であり、耐久性を向上させるためのノウハウが欲しいと思ってたとすると、なぜ耐久性を向上させることを考えたか、という部分に会社としての方針を伺うことができます。
このように、とある「知的資産」が存在するためには、それが生み出されるまでの一連の流れ=ストーリーが必ず存在するのです。
そしてその起点は、事業主の意向すなわち企業としての理念や方針であることがほとんどです。
この、企業理念・方針>マネジメント>技術・ノウハウ>製品・サービスまでの一連のストーリーを見つけ出すことが、企業の「知的資産」を正しく理解するうえでとても重要です。
その理由は大きく2つあります。
第一に、気がつかなかった「知的資産」を見つけ出すことができるという点です。
「知的資産」は、例えば製品の特長など、大抵は分かりやすいものから見つかります。逆にマネジメント系は気がつかないことが多いものです。
理由は簡単です。その企業にとって当たり前のことをしているだけですから、そのマネジメントが「知的資産」だとは気がつかないのです。
これを、製品の強みから「何故これが強みになっているのか」という問いかけを繰り返すことで、それを生み出すマネジメントまでさかのぼることができます。
そこで初めて、そのマネジメントが「知的資産」だと気付くことができる訳です。
第二に、「知的資産」を正しく維持、強化できるという点です。
先の例で、例えば経費削減と称して研修会への参加を自粛することにした場合、”技術”を維持できなくなり、次第に製品の強みが失われてしまい、「知的資産」を自らダメにしてしまう結果を招きます。
ちゃんとストーリーを把握していれば、例え経費削減を行わなければいけないとしても、研修会への参加は別だと、事業主が判断してくれれば、製品の強みを失わずにすみます。
また、研修会にただ参加させるだけでなく、その習得効果もチェックするようにすれば、技術の習得速度が向上し、さらに製品の競争力を向上させる結果が期待できます。
このように、ストーリーを意識することで、「知的資産」を維持するだけでなく強化することも考えられるようになるのです。
「知的資産」を効果的に経営に活かすためには、個々の「知的資産」の流れをストーリーとして捉えることがとても大切だと、お分かりいただけたのではないかと思います。