行政書士という職業について、どのくらいご存じでしょうか。
最近は「カバチタレ」という漫画やテレビドラマの影響、資格学校の宣伝などで人気資格の上位を占めていることなどから、その名前は聞いたことがあるといった方も増えてきています。
ただ、実際のところどんな職業なのかを正しく把握されている方は、あまり多くないと思われます。
むしろ、先の「カバチタレ」の影響で、弁護士みたいなトラブル解決人みたいなイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、それは実際の役割のごく一部を誇張したものであり、正確とは言い難い部分があります。
それでは、行政書士はなにができる職業なのでしょうか。
例えば、税理士といえば税務関係のプロ、司法書士といえば登記関係のプロ、弁理士といえば特許関係のプロ、そして弁護士は法律関係全般のプロというイメージがあります。
これらのいわゆる”士業”と呼ばれる職業は他にもあり、社会保険労務士は労務関係と社会保険に関するプロ、公認会計士は監査のプロといった形で、それぞれ得意な専門分野をもっています。
では行政書士の得意分野はというと、これが実に難しい問題なのです。
それが行政書士という職業を理解しにくくしている原因でもあります。
行政書士の業務は、行政書士法という法律によって定められています。それによると、
・官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること
・官公署に提出する書類の提出手続について代理すること
・行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること
などが挙げられています。
これを簡単に言うと、”公的文書に関するプロ”ということです。
公的文書をもう少し具体的に言うと、
・許認可を得たり事実関係の認定をしてもらうために官公庁に提出する申請書やその添付資料など
・個人の権利義務や事実関係を公に証明しうる書類やその添付資料など
となります。
この条件に該当する書類は実に10,000種類以上と言われ、分野も多岐に渡っています。
ここが他の士業と大きく異なっている点で、専門となる特定分野が限定されていないため○○のプロと言い辛いのです。公的文書が絡めば一通り取り扱えるため、ある意味「何でも屋」とも言えます。
そういう意味では弁護士に近いものがあります。
もっとも、弁護士と大きく異なる点として、行政書士は「争い事」に関与できません。
いわゆる訴訟とか深刻なトラブルのように、両者の利害関係が真っ向から対立するような状況を解決すべく活躍するのは弁護士の専門分野です。
行政書士は、むしろそうした事態に陥らないように適切に公的文書を活用し、権利義務の保護や許認可等の手続きを円滑に進めることを専門とするプロなのです。
そしてその多くは行政に関する手続きですので、それが「行政」書士という名称に反映されています。
加えて、行政分野以外でも、個人間の「争い事」を未然にもしくは初期の段階で防止するために公的文書を活用してもらい、円満な日常生活を送っていただけるよう支援することも主要な業務です。
行政書士を『あなたの街の法律家』と表現することもありますが、これはこうした「法律の町医者」的な働きを指しています。
官公庁への手続きに悩んだり、日常生活でなにか困ったことがある場合には、まずは気軽に行政書士にご相談ください。