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就業資格のない外国人を雇うと雇い主も罰せられます

在留資格で認められていない形で働く外国人は「不法就労」者となります。

例えば、以下のようなケースは不法就労ということになります。

・就労が認められていない在留資格での就労

-「短期滞在」「家族滞在」でのアルバイト

-「研修」での報酬をともなう労働

・資格外活動許可で許可された範囲外での就労

-「留学」「家族滞在」での風俗営業、あるいは週28時間を超えたアルバイト

・就労資格で認められた範囲外での就労

-「技術」「技能」での通訳や外国語学校講師などの「人文国際」の分野での就労

 

さて、こうした不法就労を防止するために、不法就労者を雇用した事業主に対しては「不法就労助長罪」が適用され、三年以下の懲役若しく三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることとされています。

加えて、事業主が在留資格を持つ外国人の場合には、在留資格取り消しとなる恐れもあります。

ということで、なかなか厳しい処罰を受けることとなります。

ですが、これまでは事業主が”不法就労”であることを知っていることが要件となっているため、明らかに不法就労であることを知っていたという客観的事実が無い限り適用されることはありませんでした。

 

ところが、今回の改正によって、不法就労であることを知らなかったことにつき事業主に過失がある場合でも適用されることになりました。

つまり、ちょっとした確認で分かるレベルのことを怠っていたがために「知らなかった」としても、罪に問われるようになったということです。

ちなみに、法令については「それ自体知りませんでした」という言い訳は通用しません。

ですので、このことを知っていた如何にかかわらず、ウッカリと不法就労者を雇ってしまったら「不法就労助長罪」で罰せられる恐れがあるのです。

 

そのため、外国人を雇用する場合には以下の2点を事前に確認しておく必要があります。

・従事してもらう予定の業務内容に対応できる在留資格の確認

・雇用しようとする外国人の在留資格および資格外活動許可の有無

 

これらを怠ったために処罰されることのないようくれぐれもご注意ください。

 

 

 

留学生のバイトは許されるのか

ファーストフードやコンビニなどで、時おり留学生とおぼしき外国人を見かけることもあるかと思います。

一般に、留学生の場合は「留学」という在留資格にて日本に滞在していることになります。

ところが、この「留学」という資格には、原則として就労が認められていません。

 

もともと留学に来るということは、研究や勉学、知識の習得が本分ですので、本来勤労する時間的な余裕はないというのが基本的な考え方です。

また、仮に「留学」でも就労できることにすると、留学と偽って出稼ぎに来るようなケースも想定されます。

そうしたことから「留学」には就労資格を与えられておりません。

 

では、コンビニ等で見かける留学生バイトは不法就労ということでしょうか。

 

実は、就労資格の無い在留資格であっても、限定的な就労を認める「資格外活動外許可」という制度があります。

たとえば「留学」の場合には、「資格外活動外許可」を得ることで

・週28時間以内(長期休暇中は1日8時間以内)
・風俗営業、特殊風俗営業、電話異性紹介営業等に従事しないこと

といった制限内で就労することが認められます。

 

余談ですが、風俗営業とはいわゆる性風俗のことではなく、接待を伴う飲食店やゲームセンター、パチンコ等の遊興的な営業を指します。性風俗については特殊風俗営業と言います。

 

学生たるもの、働くとしても学業に影響のない範囲の時間内で健全な環境にて、ということですね。

ですので、外国人パブなどで「学生です」などと紹介されることは無いと思いますが、まんいちそのようなことがある場合にはご注意ください。

 

この「資格外活動許可」ですが、入国管理局に申請することで得ることができます。

当事務所でも取り扱っておりますので、ご不明な点などございましたらお気軽にご相談ください。

 

 

 

外国人クラブのお姉様は何者か?

繁華街には、たいてい外国人パブとかクラブなどがあるのは多分ご存じだと思います。

こうしたお店はいわゆる風俗関連のお仕事ですので、技術、人文国際、技能といった一般的な就労資格では働くことができませんし、留学生などに付与される資格外活動でも当然に許可されない業務です。

 

では、そうしたお店で働くお姉様方は、いったいどんな資格で働いているのでしょうか。

それとも巷で噂されるように、実は不法滞在者なのでしょうか。

 

そういう方もいないとは言いませんが、通常はちゃんとした在留資格を持っています。

実は、在留資格のなかには、外国人に対する制限のある職を除き、原則として就労に制限のないものも存在しています。

具体的には「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つです。

 

「永住者」は永住資格を与えられた人に与えられる在留資格ですが、10年以上連続して在留、独立した生計を維持できること、最長の在留期間を認められていることなど、なかなかに要件が厳しく簡単に取得できるものではありません。

通常は、最低でも10年は日本に滞在していないといけないことになるので、外国人パブで働くお姉様方が「永住者」の資格を持っているとは年齢的に考えにくいです。

 

「定住者」はいわゆる「日系人」に与えられる在留資格ですが、「定住者」の資格を与えられるのは年齢、婚姻関係を問わず3世まで、もしくは未成年かつ未婚の4世までと制限されています。

ちなみに、日系人として多いのはブラジル、フィリピンです。

フィリピン系のクラブであれば、この資格に該当する方もそれなりにいるかと思います。

ですが、中国系の方々は該当しなそうです。

 

となると、残りは「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」ということになります。

つまり日本人もしくは永住者と婚姻関係を結んで来日された方々ということで、既婚者ということになります。

たぶん、この資格で働いているお姉様方が一番多いのではないかと思います。

 

「日系人」ではなさそうだが独身らしい、どうみても20代というお姉様にはくれぐれもご注意を。

 

 

 

外国人の単純労働者は認められるのか

在留管理制度は、原則として日本国にとって有益な人材のみの滞在を特別に許可するという姿勢です。

 

例えば、「技術」という資格であれば”理学・工学等の自然科学の分野に属する技術、知識を必要とする業務”、「技能」であれば”外国料理の調理、スポーツ指導等の特定技能を要する業務”と規定されており、専門家として就労することを求められています。

就労が認められている他の在留資格「医療」「研究」「教育」「人文知識・国際業務」なども、その規定内容から、一定以上の専門知識、スキルを持つ人材であることが前提となっています。

 

つまり、現在の在留管理制度では、誰でもできる単純労働をするために滞在するということを原則として認めていません。

 

 

なぜ認めないかについては諸々の理由がありますが、大きな理由のひとつに”治安の維持”があります。

 

現在不況の真っただ中にあるとはいえ、それでも日本という国は、他国から見てももっとも裕福な国のひとつです。

ですので、日本で働いて得られる金額は、例え単純労働で最低賃金しか貰えなかったとしても、それを持って母国に戻れば大金持ちになれるほど貨幣価値が異なる国は山ほどある訳です。

 

仮に単純労働者であっても在留許可を与えたとしたらどうなるか。

一攫千金を夢見て来日する人が大挙してくることが十分予想されます。そしてそういう方々は、いわゆる3Kと呼ばれる仕事や賃金が安い仕事であっても喜んで働くでしょうから、事業主としても支障のない限り雇い入れ、どんどん受け入れていくことが想定できます。

 

ですが、そうした方々は高い教育を受けているとは限らず、また日本人とは違ったモラルや習慣でこれまで生活してきています。

そして他の先進国の例をみても、こうした方々は同じ出身同士でコミュニティを形成する傾向にあり、日本における”当たり前”なことを学ぶ機会が極端に少ない状況に陥っていきます。

 

逆に、日本人はどちらかといえば”あ・うん”の呼吸とか、雰囲気を察することを好む傾向にあることから、相手に対して当然自分たちが期待している通りに行動してくれるものだと勝手に解釈しがちな面があります。それに対して、”日本での常識”を学ぶ機会のないこうした外国人の方々は自分達の常識で行動する訳で、当然のように両者の間に衝突が発生します。

同質の方々に囲まれて暮らすのが当たり前の日本人は、こうして異文化がぶつかり合うことで発生する諸問題に対応する能力が高いとはいえず、ますます両者の間の溝が深まっていくことが容易に想像できます。

 

その結果、外国人の方々は自分達のルールで行動することが当たり前となっていき、日本国内での法律や道徳感を共有できないまま、治安の乱れに繋がっていくというストーリーが成り立つのです。

 

 

実際のところ、現在かなり入国を制限している状況であっても外国人が多く居住する地域では、少なからず両者の間でのトラブルや治安の乱れが目立ちます。

また、移民を受け入れている先進国では、移民によるスラム化などの社会問題も発生しています。

 

こうした背景もあり、在留資格制度では単純労働者を原則として認めないという方針をとっています。

単純労働者の受け入れについてはなかなか難しい問題ではありますが、当面は現在の方針が変更されることは考えづらいと推測しています。

 

 

 

在留外国人が出国するには

在留資格を持ち日本で生活する外国人には、日本人と違ういくつかの制約があります。

そのひとつが「出国時の制約」です。

 

在留資格は、法律上は「日本国内に滞在する外国人」に対して特別に与えた許可です。

ですのでこの許可は、その外国人が日本に滞在している状態でのみ有効となります。

これを裏返すと、その外国人が日本から出国した時点で「日本国内に滞在する」という状態ではなくなり、その身分のうえに成立していた在留資格は当然のように消えて無くなります。

 

この考え方は一般的に理解されにくいかもしれませんが、例えば「結婚している専業主婦は国民年金第3号被保険者になる」というものがありますが、離婚した時点で「結婚している専業主婦」という状態ではなくなり、当然に「第3号被保険者」という資格が消えてなくなることと同じ考え方です。

 

決して「在留資格」というものが独立して付与されている訳ではなく、あくまでも「日本国内に滞在する」外国人という地位のうえに成立しているということをご理解ください。

 

そのため、在留資格を持つ外国人が日本国から出国してしまうと、その時点で在留資格を失います。

再度日本に入国するためには、改めて在留資格の取得手続きからはじめる必要があります。

以前取得していたからとか、ちょっとだけ離れただけじゃないか、などという言い訳は一切通用しません。

 

厳しいのではないかと思われるかもしれませんが、そもそも在留資格は状況や身分などを勘案し”特別に滞在することを許可”するものであって、本来は入国するごとに状況等は変わるので都度審査するのが原則なのです。

 

 

ですが、実情を言えば、いったん日本に滞在し始めたあと一時的に国外に行かなければいけないことも多々あります。

そこで予め入国管理局に許可を貰えば、現状の在留資格を維持した状態で”特別に”一時的に国外に出ることを認めることとしています。

これが「再入国許可」です。

 

このように、在留外国人はそもそもを日本人と立場が違うことを認識することが大切です。

 

 

なお、今年7月の在留制度の大改正に伴い、「再入国許可」に関しては「みなし再入国制度」というものが新たに設けられました。

これは1年以内に再入国するのであれば、出国時に簡単な手続きで「再入国許可」をしたことにする制度です。ただし以下の制約があります。

・1年を超えての出国は不可

・1年を超えての出国先での延長手続は不可。事情を問わず1年以内に再入国しなければならない。

 

上記に当てはまりそうな場合には、従来通りの「再入国許可」申請が必要となります。

 

 

 

在留資格の種類

外国人が日本で暮らすためには、なんらかの在留資格が必要となります。

そしてその在留資格は、外国者のプロフィールや日本での活動内容によって27種類に分類されています。

 

以下、簡単にご紹介します。

なお、各在留資格の説明はかなりざっくりとしたものです。

 

■就労が認められる在留資格

外交 外交官、領事館、外交使節など外交活動に従事する者およびその家族
公用 在日外国公館など、国内にて公用活動を行う者およびその家族
教授 大学もしくはそれに準じる教育機関における教授等
芸術 作曲家、画家、彫刻家等収入を伴う芸術活動を行う芸術家
宗教 外国にある宗教団体から派遣され日本にて布教活動等を行う宗教家
報道 外国の報道機関との契約に基づき取材等を行うジャーナリスト
投資・経営 一定の要件のもと投資・経営、または事業の管理業務を行う者
法律・会計事務 法律・会計関連の職業のうち日本の法律上の資格を有する者
医療 医療関係の職業のうち法律上資格を有することが求められる医療系業務に従事する者
研究 研究等を行う国または公共機関等との契約に基づき試験、研究等の業務に従事する者
教育 小・中・高等学校およびそれに準じる教育機関にて教員免許を有し教育を行う者
技術 理学・工学等の自然科学の分野に属する技術、知識を必要とする業務に従事する者
人文知識・国際業務 人文科学の分野に属する技術、知識を必要とする業務、もしくは外国人特有の文化知識や感性を生かした業務に従事する者
企業内転勤 外国にある企業から日本国内にある本店または支店等に転勤し、技術または人文科学・国際業務相当の業務に従事する者
興業 演劇、歌謡、スポーツ等の興業活動、もしくは映画制作、モデル等の芸能活動を行う者
技能 外国料理の調理、スポーツ指導等の特定技能を要する業務に従事する者
技能実習 日本の公私の機関との契約に基づき当該機関の業務に関する技能や知識を習得を目的とする者

 

■就労が認められない在留資格

文化活動 収入を得ることなく学術または芸術上の活動を行う、もしくは学ぼうとする者
短期滞在 観光等の所定の要件で短期間日本に滞在する者
留学 高等学校以上の教育機関またはそれに準じる機関で教育を受けようとする者
研修 技術、技能または知識の習得をする活動を行う研修受入先にて技術等を習得しようとする者
家族滞在 上記のうち教授から文化活動、および留学の在留資格にて在留する者の扶養を受ける配偶者または子

 

■就労の可否は個別に判断することになる在留資格

特定活動 特定研究事業活動や特定情報処理事業活動に従事する者およびその家族、外交官等の家事使用人など特定の要件を満たす者

 

■活動に制限を受けない在留資格

永住者 永住許可を受けている者
日本人の配偶者等 日本人の配偶者、日本人の子として出生した者および日本人の特別養子
永住者の配偶者等 永住者および特別永住者の配偶者または子として日本で出生しその後引き続き日本に在留している者
定住者 いわゆる難民条約に該当する難民、日系二世、三世等の定住者等

 

 

なお、上記以外にも、入国管理法で定められていませんが「特別永住者」といういわゆる在日韓国人などが該当する資格もあります。

 

 

 

在留管理制度とは

在留管理制度とは、日本に滞在する外国人を管理する仕組みです。

 

日本では、原則として日本国内に居住するのは日本人のみとしております。しかしながら、現在の国際社会において、国内に外国人を一切受け入れないということは現実的ではありません。

そこで、日本国にとって有益な外国人に限り受け入れるという方針にて日本国内への在留を認めることとし、在留許可、不許可の判断および外国人に関する情報の管理は法務局入国管理局が行うこととしております。

 

日本国にとって有益な外国人とは、ざっくり言うと、

・外交や公用上の理由により、日本国に滞在することが必要となる者

外交官や外交使節、国賓、国際機関、外国公館の公用職員、およびその家族などが該当します。

・一定以上の技能、技術、能力を持ち、国益の増強に貢献すると考えられる者

技術者、教師、経営者、コーチ、芸能、医療関係者、研究者、法律家などが該当します。

・外国に日本の高度な技術を伝えるべく技術等を習得するために教育を受ける者

留学生や実習訓練生などが該当します。

・日系人など日本人に準じる扱いを受ける者

ブラジルやフィリピンなどからの日系人などが該当します。

・観光者

短期滞在し、日本国内を観光目的で旅行するものが該当します。

 

といった感じです。

上記をご覧になりお分かりかと思いますが、誰でもできる労働に従事する、いわゆる「単純労働者」は含まれておりません。

 

 

日本に滞在したい外国人は、まず入国管理局から在留の許可を得る必要があります。

その際に、滞在理由と本人の能力、資格、状況等に応じた在留資格を与えられ、その資格で定められた範囲(就労の可否や職種など)でのみ、日本国内での活動を許されます。

仮に、許可された範囲を超えた活動をした場合には、許可が取り消され国外退去処分を受けることとなります。

 

在留資格には、原則として期限が定められており、その期限を越えて滞在したい場合には更新の手続きが必要となり、その際に改めてチェックされます。まんいち在留資格を満たさない状況になっていたら、許可は下りず国外に退去しなければなりません。

 

また、在留資格をもつ外国人が一時的に国外に移動する際には、あらかじめ許可を必要とします。

仮に許可を得ないまま国外に出た場合には、改めて入国の許可から行う必要があります。

 

 

このように、日本に滞在する外国人は、こうした厳しい在留管理制度に従う必要があり、更新の手続きを怠ったまま滞在を続けたり、許可を得ずに入国したような場合には「不法滞在」とみなし、強制的に国外退去処分を受けることになります。

 

 

 

契約の形態

契約には、「売買」「贈与」「賃貸借」「消費賃借」「使用賃借」「寄託」など13種類の形態が民法で定められています。

ですが、その型に当てはまらないものは契約として成立しないかというと、そんなことはありません。

以前にもお伝えしたように、契約は当事者間の意思表示の合致で成立し、その内容は無効となるものでない限り有効なのです。

 

ではなぜ13種類の契約形態が定められているかというと、契約行為の簡素化のためです。

 

本来であれば、契約のたびに当事者間でひとつひとつ決め事を合意する必要があります。

仮に重要な事柄にもかかわらず合意事項から漏れてしまったら、深刻なトラブルになりかねませんから、そうしたリスクを回避するためには、かなり慎重に契約内容を詰めなければならないことになる訳です。

それはかなり大変なので、一般によく用いられる契約形態での基本事項を定めておいて、その部分を当事者間で合意していない場合には、その基本事項に基づいて合意したとみなすこととしたのです。

これにより、必要最低限のことだけ合意確認すればいいのでかなり簡素化されますし、おおざっぱな契約をしてしまった場合でも、法令によって足りない部分が補完され、まんいちトラブルになった場合でも、裁判所にて法令にもとづく客観的な判断により迅速に解決が図れるという訳です。

 

逆にいうと、ある程度キチンとその形態に定められている内容を知っておかないと、あとから「そんなことは知らなかった」「そんなつもりではなかった」と言っても仕方がないのでご注意を。

 

すべての形態を解説するのは大変ですので、気をつけておきたい点を列挙しておきます。

 

双務契約か片務契約か

契約の当事者双方とも相手になんらかの義務を負うものを「双務契約」、当事者の一方しか義務を負わないのを「片務契約」と呼びます。

双務契約の場合、お互いに義務を果たすことが求められるので、一方が義務を果たさない場合に、他方も相手への義務を果たさなくてもいいという決まりごと(これを同時履行の抗弁権と言います)があります。

双務契約の代表例は「売買」「雇用」「請負」「賃貸借」で、片務契約の代表例は「贈与」ですが、当事者双方ともなにかをすることが求められているかどうかで概ね判断することができます。

仮にトラブルになったときには、どちらのパターンなのかを意識するとよろしいかと思います。

 

有償契約か無償契約か

契約に伴い、相手に対価を支払う必要があるものが「有償契約」、そうでないものが「無償契約」です。

有償契約の代表例は「売買」「雇用」「請負」「賃貸借」で、無償契約の代表例は「贈与」です。

有償契約の場合には、対価や提供物に対しての提供する側の責任範囲が大きく、一般に期待されるものより低品質なものを提供した場合に、補償しなければならない義務が生じます。

例えば、有償契約である「売買」により購入したものがどこか故障していたら、売主に対してなんらかの対応を求めることができますが、無償契約である「贈与」で貰ったものに対しては、どこか壊れていても文句はいえないことになります。

 

諾成契約か要物契約か

当事者間の合意のみで成立するのが「諾成契約」、目的物の引渡しも行われはじめて成立するのが「要物契約」です。

契約では諾成契約が原則ですが、「消費賃借」「使用賃借」「委託」については、対象となるモノを相手に渡さないと契約そのものが成立しないこととされています。

「消費賃借」の代表例はローン契約です。借りたはずのお金がまだ手元にないのに、契約が成立したとされ利息を取られるのは変ですよね。

 

要式契約か

「要式契約」とは、例えば必ず書面で行うなど一定の方式にもとづいて契約をすることを求められるものです。

代表例は「保証契約」で、キチンと書面にて契約を行わないと無効とされますので、ご注意ください。

 

 

このように、契約を行ううえで、その内容や効果などを意識するだけでも、トラブルを未然に防ぐことができます。

ただ、なかなか細かい点をすべて把握することは難しいのも事実です。

契約を行うにあたり、なにか疑問などを感じるようであれば、お近くの行政書士にお気軽にご相談してみてはかがでしょうか。

 

 

 

契約を取り消すこと、契約を解除すること

予約をキャンセルする、いったん購入した商品を返品する、契約を破棄する、など、「契約」を取り消す行為は一般的によく見受けられます。

実は、これらは法律学的にいうと、「契約」の「解除」という表現を用いて、「契約」の「取消し」とは区別しています。

どっちでも「契約」が無くなるのだから同じじゃないか、と思うかもしれませんが、その意味合いが大きく異なるため、区別しておく必要があるのです。

 

■契約の取消し

・もともと契約の成立自体に問題があり、一応有効とは扱われるが、契約自体の有効性に疑問があると扱われる。
・取消しを行えるケース、および取消権を持つものは法律によって定められたものに限られている。
・取消しは、取消権者の一方的な意思表示で成立する。
・取消しが行われると、契約は最初から無かったものとみなされる。
・契約の当事者は、原状回復(物事を契約時の状態に戻す)義務を負う。

 

■契約の解除

・契約の成立自体には問題が無く、有効に成立していたと扱われる。
・解除を行えるケースには様々なものがあり、当事者間の合意で決めることができるものと、法律で定められているケースとがある。
・解除は、解除条件を満たす場合に、解除できると定められた者(解除権者)による一方的な意思表示によって成立する。
・解除が行われると、契約は最初から無かったものとみなされるが、”解除したときから”と扱われるケースもある。
・契約の当事者は、原状回復(物事を契約時の状態に戻す)義務を負う。ケースによっては損害賠償責任を負う場合もある。

 

細かい部分での違いはもう少しありますが、概ね以上のような違いがあるとだけご理解いただくだけで十分です。

 

なお、「解除」を行えるケースとしては、以下のようなものがあります。

・契約の際に「解除条件」を定めており、解除条件が成立した場合に、解除できると定めた側からの解除
・一方が期限内に契約を実行しなかった場合の、他方からの法律に基づく解除
・両者の合意による解除

 

もっとも、日常生活をしている中では、上記の違いを意識することはさほど無いかと思いますが、「契約」にあたり以下の点は留意しておくことをお勧めします。

・契約内容に自分に不利な「解除条件」が存在しないか
・「解除条件」が自分に不利にならないよう定めるべきか

 

また、不利な契約を締結してしまい取り消したくても取り消せないと諦めないでください。

一見取り消しができないと思われるケースであっても、法律で定められた要件を満たすことで取り消せる場合があります。

 

行政書士は、そのようなケースについて対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

 

 

 

契約を取り消すことはできますか

契約は、いったん締結したらもはや取り消すことはできないのでしょうか。

 

結論から言うと、一定の条件が揃えば取り消すことができます。

ただし、もともと契約の成立そのものに疑問があるようなケースに限り認められています。

まあ、簡単に取消ができてしまうようでは、そもそも安心して契約などできませんから、当然と言えば当然ですね。

 

では、どのような場合に認められているかと言うと、大まかに以下のケースに限定されています。

 

■詐欺、強迫による契約の場合

契約そのものが、相手の詐欺や脅迫によって締結されたものである場合には、詐欺だと気付いた時点あるいは強迫から逃れた時点から一定の期間内であれば、契約そのものを取り消すことができます。

契約そのものが、お互いの正常な判断のもと締結されたとは言えず有効とは言えない訳で、詐欺もしくは脅迫の被害者に、契約そのものを無かったことにする権利を与えているのです。

 

ただし、詐欺もしくは脅迫した相手と自分以外に、そのことを知らない第三者が関与していた場合には、取り消せる範囲に制約を受ける場合があります。

 

■行為能力制限者が行った契約の場合

行為能力制限者というのは、その人だけでは契約などの法律行為が安心して行えないだろうと判断される人のことで、例えば未成年者、痴呆症などで正常な判断が困難な方などが該当します。

これらの方々を保護する立場の人は、必要に応じて、自らが保護する行為能力制限者が行った契約を取り消すことができます。

そもそも、満足に契約内容を理解しての締結か怪しい訳で、行為能力制限者の権利を保護するために、保護者に取り消す権限を与えているのです。

 

■その他特殊なケース

特別に法律によって定められている取消要件に一致する場合に認められる特殊なケースがいくつか存在します。

例えば、「書面によらない贈与契約」の場合、贈与者はまだ贈与していない分については、自分の都合のみで取り消すことができます。つまり「これ以上はもうあげない」と勝手に決めることができるのです。

ただし、キチンと契約書なりの書面で約束してしまっていた場合には、勝手に取り消すことができませんので、貰う側はやはり契約書の形にしておけば安心です。

 

ここまで読まれて、上記以外にもいろいろ契約を取り消している場面、例えば”レストランの予約の取消”とか、”通信販売で購入した商品の返品”とか、これらは該当しないのか、という疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。

 

これらも一般には「取消」という言葉を使いますが、法律的には「解除」もしくは「撤回」といい、「取消」とは区別しております。

この区別は各々の法律的な性質の違いによるもので、最も大きな違いは、「取消」は原則として相手の同意を必要としないのに対して、「解除」「撤回」は同意を必要とするものです。

また、それ以外にも細かい差異があります。

 

次回、その点をもう少し掘り下げてご紹介します。