「知的資産」を「特徴」で分類する

知的資産を「特徴」で分類してみると、概ね以下の4カテゴリに分けられます。

 

■商品・サービス

実際に顧客に対して提供している商品やサービスそのものの特徴です。

”耐久性に優れている”、”優れた性能”、”デザインが独特”、”機能が豊富”、”鮮度がいい”、”細やかなサービス”といった商品やサービスの内容にもとづくもの、”シェア”、”商品イメージ”、”希少性”といった市場との関係にもとづくものなどが挙げられます。

「ブランド」も、このカテゴリに属します。

 

■技術・ノウハウ

提供する商品、サービスを生み出すもととなる技術やノウハウの特徴です。

”他にない技術”、”デザイン力”、”設計ノウハウ”、”アイディア力”、”優れた調整スキル”、”独自の営業マニュアル”など、いわゆる「スキル」や「ノウハウ」と称される類のものが挙げられます。

「特許」などの知的財産権も、このカテゴリに属します。

 

■マネジメント

会社組織や社外とのネットワークの管理の仕方に関する特徴となります。

”優れた人財育成システム”、”独特の組織構成”、”商品管理システム”、”ファンクラブ運営”、”独自の流通ルート”、”独特のマーケティング手法”といった、カテゴリ名の通り「マネジメント」に属するものが挙げられます。

 

■経営理念・方針

会社そのものの運営指針、ポリシー、企業の目的、理念といったものが対象になります。

”顧客第一”、”最先端の技術で圧倒”、”失敗を恐れずチャレンジ”といった行動方針的なもの、”自然との調和”、”社会貢献”、”地元密着”といったポリシー、”夢をかたちに”、”明るい明日を築く”といった理念的なものが挙げられます。

 

そして、これらの各カテゴリは密接に繋がっています。
実は、「経営理念・方針」>「マネジメント」>「技術・ノウハウ」>「商品・サービス」という順序が成り立ち、上位が下位の「知的資産」を生み出す源泉となっているのです。

 

最終的に利益を生み出すのは「商品・サービス」です。したがって企業にとって、「知的資産」として列挙されるような特徴をもった強い「商品・サービス」を生み出し提供できるかが重要となります。
しかも、企業が長く存続するためには強い「商品・サービス」を継続的に提供できる必要があります。

 

これを可能にするのが、優れた「技術・ノウハウ」です。
「技術・ノウハウ」があるからこそ、それを活用した「商品・サービス」が継続的に生まれてきます。
もちろん個々では当たり外れがあるにしても、長い目で見れば競争力のある「商品・サービス」の提供を見込むことができます。

 

そしてこの「技術・ノウハウ」もある日突然身につくものではありません。
それを醸成する環境、素地が必要なのはもちろんのこと、維持発展させることのできる土台も必要となってきます。
それが「マネジメント」です。
育てるべき「技術・ノウハウ」をキチンと拾い上げること、それを十分に育て上げること、そして必要なレベルを維持しさらに発展させることは、個人の努力だけではすぐに尽きてしまいます。会社が「マネジメント」してはじめて継続できるのです。

 

そして「マネジメント」には、一貫した方針を持つことが大切です。それがないと、コロコロと「マネジメント」内容が変わり、安定して「技術・ノウハウ」を育てることはできません。
したがって、「マネジメント」を支えるのは「経営理念・方針」ということになります。
「マネジメント」における、判断基準を提供しているとお考えいただければよろしいかと。

 

 

この、「経営理念・方針」>「マネジメント」>「技術・ノウハウ」>「商品・サービス」という一連の関係は、「知的資産」を経営に活かす場合に極めて重要な意味を持ちますので、ぜひ覚えておいてください。

 

 

 

「契約」には強制力があります

当事者間で合意して成立した「契約」

もしこれを守らなかったらどうなってしまうのでしょうか。
最初はその気があったけど、後で気が変わった場合には、無かったことにできるのでしょうか。

 

「契約」は、いったん成立すると、その時点から”強制力”を持つことになります。
この”強制力”は、法律に支えられています。
つまり、「契約」によって当事者に生じた権利については、法律が必ず実現することを保証し、逆に義務については、実施しなかった場合には罰せられるということです。

ですから、「契約」を守らなかった場合には、「法律」つまりそれを体現する「裁判所」によって実現を強制されるか、またはなんらかの代替手段を講じることが命じられます。加えて「債務不履行」などの理由により損害賠償をしなければならない事態に陥ります。

 

そして、いったん成立した「契約」は、特定の条件を満たさない限り勝手に解除することはできません。
「契約」の時点で、相手はそれを実行することを期待している訳で、その期待を裏切ることは「信義誠実」に反するという理由です。これは「信義誠実の原則」といい、民法の重要な原則のひとつです。
気が変わったとか、当初と事情が変わったとか、その程度の自分勝手な理由では、簡単に「契約」を解除することはできません。

もちろん解除ができない訳ではないのですが、客観的に見て妥当と思われる相当な理由が必要です。

 

では、相手が「契約」を守らなかったときに、”どうせ裁判所の力で実施が強制されるのだから”と自力で強制してもいいのでしょうか。
例えば、”なかなか借金を返してくれないから、相手から無理やり借金相当の金額を奪い取る”なんてことは、これは認められません。

法律で保護された権利だからといって、権利者が義務者に直接強制することは「自力救済」と呼ばれ禁止されているのです。
まあ簡単に言うと、勝手に自分でそうした行為をすることを認めてしまうと、「力が正義」という風潮になってしまい社会の秩序を維持するのが大変になるから、ということです。
ですので、強制力を行使するのは、法律にもとづき権威のある裁判所が行うものとされている訳です。

 

余談ですが、家賃を払わないからといって契約を解除し、勝手にアパートの扉の鍵を付け替えると、「自力救済」とみなされて、大家さんは賃貸人から訴えられれば損害賠償を支払うことになります。
ですので、その場合大家さんは、契約の解除とともに裁判所に訴え、強制退去してもらうよう主張しなければならないのです。

 

ただし、裁判所が「契約」にもとづき強制力を行使するためには、まずどのような「契約」だったかを判断することになります。その判断を行ううえでは客観的な証拠が必要となります。
「契約書」は、そういう場面で重要な証拠として扱われます。

大事な約束は「契約書」にするのが一番ということですね。

 

 

 

行政書士業務:建設業、産業廃棄物処理業・一般廃棄物処理業

建設業は非常に多くの規制や条件が課せられている業種です。

 

一定以上の規模の建設工事を請け負う場合には、かならず国土交通大臣又は都道府県知事の建設業許可を受けていなければなりません。
そしてこの建設業許可は28種類に区分されており、その区分で許された形態の建設工事しか請け負うことができません。

例えば、木材の加工または取り付ける工事いわゆる大工工事の場合には「大工工事業」が必要となり、壁土やしっくいを塗り付ける工事いわゆる左官工事の場合には「左官工事業」が必要、という感じです。

 

この建設業許可を取るためには一定の要件を満たす必要がありますが、これがけっこう厳しいもので、特に管理責任者および専任技術者の資格が問題になるケースが多く、いかに資格を満たしているかを証明できるかが求められます。
どういうケースなら認められるかは最終的に行政側の判断になるため、行政手続きと調整力に長けた行政書士の存在が建設業許可を得る際のキーになることも少なくありません。
腕のいい行政書士が、建設業許可を得るのがほぼ不可能と思われた案件を、行政側と協議を重ねつつ要件を揃えていき、最終的に許可を勝ち取ったという事例もあります。

 

また、建設業の花形といえば「公共工事」です。

公共工事は、”競争入札参加資格”がある建設業者の入札により受注先が決定されます。そのため参加資格がないと、建設業者はそもそも公共工事を受注することができないのです。
参加資格を得るためには所定の経営事項審査(いわゆる「経審」)を受ける必要があり、その結果得られた評価ポイントにより入札できる工事の規模が制限されます。つまり、より大きな公共工事を請けるには、より多くの評価ポイントを得る必要があるのです。
また、この評価は一般的に2年に一度受ける必要があります。

したがって、普段から高い評価ポイントを得られるように経営する必要がある訳ですが、行政との関係も強い行政書士が、審査手続きだけでなく経営指導も含め対応するのが一般的です。

 

このように、建設業関連業務は行政書士業務のなかでも花形業務と言えます。
建設業業務を専門とする行政書士は、建設業界にも詳しく経営にも明るいため、事業主からも頼りにされる存在です。

 

 

産業廃棄物処理業者、一般廃棄物処理業者についても、建設業ほどではありませんが、例えば処理施設を建設する、実績を報告するなど、営業するために様々な許認可や届出を必要とします。
またその許認可を得る要件も、大規模になるほど厳しいものとなっており、その面で行政手続きと調整力に長けた行政書士が求められております。

特に最近は、不法投棄の被害が増えていることから取り締まりも強化されており、健全な経営を続けるという意味でも、行政と業界の双方に明るい行政書士の存在がますます重要となっています。

 

 

なお、当事務所でも建設業および廃棄物処理業に関する許認可、届出に関するご相談を承っておりますので、ご気軽にご相談ください。

 

 

 

知的資産をより具体化してみる

「知的資産」は、企業活動を支え企業の利益を生み出す源泉であり、その企業の特徴となる、”知的活動に起因する”資産です。

例えば、「営業力が強い」ことが企業の利益を生み出しているのであれば、それは”知的活動に起因する”ものであり「知的資産」と考えられます。

ですが、その「営業力の強み」が”特定個人の力による”ものと”営業部門のチーム力による”ものでは、その性質が異なってきます。
また、その「営業力」も”個人向けに強い”のか、”法人向けに強い”のかで異なってきますし、どの程度強いのかも問題となってきます。

 

このように、「知的資産」を考えるうえでは

・特徴:何を、どんな事をといった「知的資産」が提供する企業の特徴となるもの

だけでなく、

・主体:誰が、何がといった「知的資産」の主体となるもの

・対象:誰向けに、何向けにといった「知的資産」のターゲット

・比較:競合他社や一般的基準と比べてどの程度「知的資産」が優れているのか

という項目も見ていくことが重要です。

 

例を挙げてみると、

「営業部門のチーム力による、特定業種向けの営業力は、競合他社と比較して2倍の成約率を誇る」

・特徴:営業力の強さ
・主体:営業部門のチーム力
・対象:特定業種向け
・比較:2倍の成約率

 

「ある技術者が、精密さを求められる特定市場向けに他社比2倍の性能を誇る製品を開発する能力がある」

・特徴:製品開発力
・主体:ある技術者
・対象:精密さを求められる特定市場向け
・比較:2倍の性能

 

という感じです。

こうして表現してみると、その企業の「知的資産」がある程度具体的に分かるようになってきます。

 

この4つの項目のなかで、「特徴」と「主体」については、「知的資産」の性質を知るうえで重要であり、また「対象」と「比較」については、その価値の強さを知るための判断基準となります。

次回以降は、「知的資産」の性質を、「特徴」と「主体」に着目し、もう少し深掘りしてみます。

 

 

 

契約はいつ成立するのか

「契約」とは”相対立する二つの意思表示の合致によって成立する法律行為”です。
既に何度かご紹介しているので、もう十分ですね。

 

さて、では「契約」が成立するのはどのタイミングでしょうか。
”契約書に署名したとき”ではありませんよ。前にもご紹介したとおり、契約書が無い契約も多数ありますので、これではないこともご理解いただけると思います。

 

答えは”二つの意思表示が合致したとき”です。

一番分かりやすいのは、一方が”売った”と「申し込み」を行い、他方が”買った”と「受諾」することで、お互いの意思表示が合致したときです。もちろん言葉ではなく「頷く」などの態度でも構いません。

ですので、厳密に言うと、口頭レベルや単に頷いただけであっても、いったんお互いその内容で合意したとみなされたあとは、原則として勝手に取り消すことはできません。
仮に「あれは冗談だった」とか「その場の雰囲気で」とか言い訳をしても、相手方が本気でその約束を信じて実行を迫ったとしたら、それを実行しないでいると「契約違反」になってしまいます。

くれぐれも、約束をする場合にはご注意願います。

 

もっとも、実行を迫る側もそれなりの証拠を示す必要が生じてきますので、仮に迫る側になりそうであれば、キチンと契約書を交わすとか証人を立てるなどの対策は講じておいたほうがよろしいでしょう。

 

このように、「申し込み」と「受諾」という二つの意思表示の合致によって「契約」は成立します。
ところで、両者とも相対していれば、その場で意思表示が合致したことが分かりますが、両者が遠隔地で離れていた場合にはどうなるのでしょう。
例えば、郵送のように、一方の意思表示が相手に伝わるまでに期間を要するようなケースです。

 

これは、どのように「申し込み」されたかによって変わってきます。

「申し込み」に回答期限が設けられていた場合には、その期限までに申込者に対して「受諾」したという通知が”到着した”ときです。

これに対して「申し込み」に明確な期限が定められていなかった場合には、「受諾」したという通知を”発信した”ときになります。

 

民法では、両者が意思の合致があったことが認識できてはじめて「契約」が成立するという趣旨のもと、申込者に対して「受諾」の旨が伝わった時点とされています。そうでないと、申込者側としては実際に「受諾」されたのかどうか認識できませんので。

回答期限をつけた「申し込み」の場合には、その期限までに「受諾」が来なければ、「拒否」されたとみなすことができますので、本趣旨にもとづき上記のように定められています。

ところが、期限を定めなかった場合、申込者は勝手に「拒否」されたとみなすことができず、むしろいつ「受諾」されても構わないと考えてるとみなされます。そこで、申し込まれた側が「受諾」した時点で「契約」を成立させたほうが、両者の意思を最大限尊重したことになるという訳です。

 

そんな細かいことは、別にどちらでもいいじゃないかと思うかもしれません。
ですが、なんらかの理由で「受諾」の通知が申込者に届かなかった場合に、このことが重要になります。

期限を定めた場合には、「受諾」が到着しなかったので「契約」は成立しません。
これに対して、期限を定めなかった場合には「受諾」した時点で成立しています。「受諾」がなかなか通知されてこないからといって、勝手に「拒否」されたと勘違いすると、実際には「契約」が成立しており、トラブルとなりますのでご注意ください。

 

さらにややこしい話になりますが、これが電子メールやインターネットでの申し込みだった場合には、相手に「受諾」の通知が届いた時点で「契約」が成立します。対面している場合と一緒という扱いなのです。
ですので、なんらかの通信障害で相手に「受諾」した旨が通知されなかった場合には、「契約」は成立しません。

 

こうしてみると、郵送等で期限を定めない「申し込み」の場合のみ特別扱いということですので、期限を定めて対応するのが一番いいということですね。

行政書士に依頼する理由

近年、行政サービスの充実が謳われており、以前に比べると官公庁での窓口対応もずいぶんと親切になりました。また、手引書等もずいぶん充実してきており、様々な許認可や届出を自分自身で行うことへの敷居もずいぶん下がりました。

契約書、内容証明郵便のやり方なども、インターネットの普及に伴い、検索すれば情報が無料で手に入る時代となり、自分自身でできる範囲も広がりました。

 

もともと、行政書士が手掛ける公的文書は本人を代理して作成するものであって、手順や書き方等が分かるのであれば、本人自身が作成し対応することは一向に構わないのです。
そのため、近年の行政サービスの充実および情報化の流れにより、行政書士に依頼する必要などなく、行政書士という職種自体不要になったのではないかという極端な意見まで登場しています。

もっとも、それを言い出すと、弁護士、税理士、司法書士等が行っている業務も、本人が行っても構わない訳で、実際本人申請による登記手続きや、弁護士無しでの訴訟なども徐々に増えてきております。

 

では、行政書士の人数が減少しているかというと、全国では平成20年で約3万9千名、平成23年で約4万2千名と、むしろ増えています。もっとも、他の士業と兼業だったり、登録だけして開店休業状態の方もいらっしゃると思うので、一概には言えませんが、それでもかなりの行政書士の方が全国で活躍されていることが分かります。

ということは、行政サービスの充実と情報化の進展にも関わらず、それだけ行政書士のニーズが全国に存在するということです。

 

さて、自分で対応できるはずのものを、どうして行政書士に依頼するのでしょうか。

 

■時間を節約したい
土日対応する官公庁も徐々に増えてきていますが、まだまだ平日でなければ対応できない手続きもあります。また、わざわざ官公庁に出向くのも面倒という方もいらっしゃいます。

起業する方や経営者の場合には、その手続きを自分や従業員が行う時間が勿体ないと感じる方もいらっしゃいます。その手続きに時間を取られるよりは、本業に時間を割きたいということです。
特に許認可の場合、何度か所轄官公庁に赴き事前協議をする必要がある場合も多く、その度に時間を取られるのは堪らないという訳です。

加えて、内容によっては法律の内容を精査したり、必要事項を調査しなければならない場合もあり、そうした調査に自分の時間を掛けたくないというニーズもあります。

 

いわば、そういう方々向けの代行サービスというニーズに応えていることになります。

 

■確実に処理したい
行政サービスの充実とは逆行しますが、行政の福祉化の進展に伴い様々な規制が必要となり、現在ではそうした規制をすべて把握することは、一般の方には難しくなってきています。
加えて、その規制に該当するか否かを判断するのは行政側に委ねられており、一般の方々とは若干判断基準が異なることも往々にしてあります。

同様に、契約書、内容証明書などを作成するにあたり、法的見地から考慮すべき点もありますが、民法等を熟知していない一般の方には、そうした点に気がつかずトラブルの原因になるケースもあります。

 

そこで、行政書士がその専門知識を活用し対応することで、確実に処理することを可能とします。
もちろん、要件によってはもともと不可の場合もありますので、行政書士に依頼すれば絶対処理できるという訳ではない点にはご注意ください。

 

■安心感が欲しい
対応方法も分かる、時間もある、という方でも、第三者の観点からのチェックによる安心感を求める場合もあります。
その場合、専門家である行政書士によるチェックが有効です。

 

以上のように、行政書士にご依頼する方が期待することは、専門知識はもちろんのこと、なによりも依頼する方の要望をキチンと捉える能力とそれに対する適切な対応力ではないかと思われます。

 

当事務所では、そうしたご依頼者様の想いに応えるべく、専門知識とアイディアと誠実さでご支援することをモットーにしております。

お気軽にご相談ください。

 

 

 

「知的資産」はどんな資産?

「知的資産」とはどのような資産なのかを、もう少し詳しく見てみましょう。

 

すぐに思い浮かぶのが、特許や実用新案、著作権といった「知的財産権」、ブランド、営業秘密、企業秘密、ノウハウといった「知的財産」でしょう。
これらは知的活動に起因しており”権利”としての地位を確立していますので、資産としての価値が分かりやすいものです。ですので、「知的財産権」「知的財産」は立派な「知的資産」です。

ですが、果たしてこれらのみが「知的資産」なのでしょうか。

 

実は、企業の業績に大きく関わる”知的活動に起因するもの”というのは他にもあります。

例えば、優れた組織力、営業ネットワーク、経営理念、人材育成体制、顧客とのネットワーク、独特のICTインフラといった、「知的財産」とはいえないが”知的活動に起因するもの”であって、それらが存在することによって直接的、間接的に利益を生み出す源泉となっているものです。

 

仮にそれらが欠けてしまうと、現在生み出している利益を上げることができなくなる、イコール企業の価値を損ねてしまうことになります。
具体的に、どのように価値を損ねるかという点については、その「知的資産」の性質や内容によって変わってきます。

一例を挙げると、「優れた組織力」や「顧客とのネットワーク」が損なわれた場合、それは即座に生産力や販売力に影響し、売上減となって目に見えてきます。
ところが、「経営理念」や「人材育成体制」が損なわれたとしても、直近のビジネスには影響しません。しかしながら、数年経過するについて、徐々に組織がおかしくなり売上減につながっていきます。

 

このように、「知的資産」とは、

・知的活動に起因するものであること
・直接的、間接的に利益を生み出す源泉となり、企業価値を支えるものであること

という2つの要素をもった資産ということになります。

 

ところで、これら「知的資産」は、よくよく見るとその”企業の特徴”を表していると思えませんか。

組織力が違う、営業力が強い、経営方針が素晴らしい、人材豊富だ、顧客との信頼関係が強い、システム化が進んでいる。
これらは、さきの「知的資産」として挙げたものを言い換えただけです。こうして眺めてみると、その企業がどのように見られているか、つまり”特徴”を端的に表していることになります。

 

その企業の「知的資産」として挙げることのできるもののうち、いずれかが劣化したり欠けたりすると、その「知的資産」にもとづく特徴を失い、もはやこれまで存在していた企業とは違った存在になります。

営業力の強かった企業がその営業力を失ったとしたら、顧客とのネットワークが強かった企業がそのネットワークを失ったら、その企業はどういう存在になるでしょうか。

そう考えるとその意味がお分かりかと思います。

 

このように、「知的資産」とは、企業活動を支え企業の利益を生み出し、企業の特徴となる、極めて重要な資産です。
自分の企業がどのような「知的資産」を保持しているのかを知ることは、より良い経営や更なる価値の創造、その他さまざまな場面で役立ちます。

次回は、もう少し具体的に「知的資産」の中身について迫ってみたいと思います。

 

 

 

意思表示ってなんですか

前回のコラムにて、「契約」とは”相対立する二つの意思表示の合致によって成立する法律行為”のことであると述べました。
ここで登場する「意思表示」というものについて、今回もう少し詳しく説明します。

 

おさらいですが、「意思表示」とは”何かをしたいという意思の表現”です。
この”何かをしたい意思”というのは、特に限定されるものではなく、一般的に要望して認められるような内容であれば構いません。
そして、この”何かをしたい”という意思を相手に伝えることが”意思の表現”ということになります。

 

ここで、”何かをしたい”という意思を相手に伝えるまでのプロセスを、少し深掘りして説明します。

 

STEP1:”○○したい”という意思を持つ

例えば、商品を見て「あの本を500円で買いたい」とか、「あの本を500円じゃなくて400円でなら買いたい」など、”○○したい”という意思を最初に持つことになります。
これを「効果意思」と表現します。

この「効果意思」ですが、内心で思うことですので、実際のところさまざまな「意思」が発現しています。そのなかで、実際に相手に伝えて実現させる目的をもった「意思」のみが「効果意思」として有効と考えられます。

 

STEP2:相手に「効果意思」の内容を伝えようと決意する

「効果意思」は、あくまでも内心での事象なので、「効果意思」そのものは本人にしかわかりません。実際に相手に対してその意思を認識してもらうためには、内心にある「効果意思」を相手に対して”表示”するという行為が必要となります。
この、相手に伝えようと決意することを「表示意思」といいます。
さきの例でいうと、「本を買いたいことを店員に伝えよう」と思うことが、それにあたります。

 

STEP3:実際に相手に「効果意思」の内容を伝える

「効果意志」を相手に伝えるためには「表示意思」を持つだけではダメで、実際に相手に伝える行為が必要です。
この、実際に相手に伝える行為のことを「表示行為」と呼びます。
さきの例でいうと、「この本を500円で売ってください」とか「この本を400円にまけてください」と店員に実際に伝える行為ですね。

 

この3つのSTEPを経て、実際に「効果意思」が相手に伝わる、すなわち「意思表示」がなされることになります。

 

ちなみに、本人以外からみれば「表示行為」の内容のみが「表示意思」として認識されるわけで、その「表示意思」が実際に「効果意志」と合致するものかどうかは、本人しか分かりません。

例えば、最初は「500円ではなく400円で買おう」と思っていたのに、「これください」としか店員に言わなかったとしたら、「表示意思」としては「500円で買う」と認識され、実際は「400円で買う」という「効果意思」だったことは、相手には伝わりません。
まあ当然ですね。

 

ところが、民法では実はこの「効果意思」のほうを重視します。
というのも、真の意思は「効果意思」だと考えられているからなのです。単に伝え方が悪かっただけであり、もともと「表示行為」で示された意思をもっていないというのがその根拠です。
そのため、場合によっては「効果意思」と「表示行為」とのズレにより、「意思表示」そのものが”無かったこと”になるケースもあります。
もちろん、その場合「契約」も”無かったこと”になってしまいます。

 

「契約」において、相手の意思表示が実際に「効果意思」どおりの内容なのかどうか、これを確認しながら「契約」をまとめることも重要なポイントなのです。
「実はそんなつもりじゃなかった」と相手に言わせないよう、ご注意ください。