「知的資産」はどんな資産?

「知的資産」とはどのような資産なのかを、もう少し詳しく見てみましょう。

 

すぐに思い浮かぶのが、特許や実用新案、著作権といった「知的財産権」、ブランド、営業秘密、企業秘密、ノウハウといった「知的財産」でしょう。
これらは知的活動に起因しており”権利”としての地位を確立していますので、資産としての価値が分かりやすいものです。ですので、「知的財産権」「知的財産」は立派な「知的資産」です。

ですが、果たしてこれらのみが「知的資産」なのでしょうか。

 

実は、企業の業績に大きく関わる”知的活動に起因するもの”というのは他にもあります。

例えば、優れた組織力、営業ネットワーク、経営理念、人材育成体制、顧客とのネットワーク、独特のICTインフラといった、「知的財産」とはいえないが”知的活動に起因するもの”であって、それらが存在することによって直接的、間接的に利益を生み出す源泉となっているものです。

 

仮にそれらが欠けてしまうと、現在生み出している利益を上げることができなくなる、イコール企業の価値を損ねてしまうことになります。
具体的に、どのように価値を損ねるかという点については、その「知的資産」の性質や内容によって変わってきます。

一例を挙げると、「優れた組織力」や「顧客とのネットワーク」が損なわれた場合、それは即座に生産力や販売力に影響し、売上減となって目に見えてきます。
ところが、「経営理念」や「人材育成体制」が損なわれたとしても、直近のビジネスには影響しません。しかしながら、数年経過するについて、徐々に組織がおかしくなり売上減につながっていきます。

 

このように、「知的資産」とは、

・知的活動に起因するものであること
・直接的、間接的に利益を生み出す源泉となり、企業価値を支えるものであること

という2つの要素をもった資産ということになります。

 

ところで、これら「知的資産」は、よくよく見るとその”企業の特徴”を表していると思えませんか。

組織力が違う、営業力が強い、経営方針が素晴らしい、人材豊富だ、顧客との信頼関係が強い、システム化が進んでいる。
これらは、さきの「知的資産」として挙げたものを言い換えただけです。こうして眺めてみると、その企業がどのように見られているか、つまり”特徴”を端的に表していることになります。

 

その企業の「知的資産」として挙げることのできるもののうち、いずれかが劣化したり欠けたりすると、その「知的資産」にもとづく特徴を失い、もはやこれまで存在していた企業とは違った存在になります。

営業力の強かった企業がその営業力を失ったとしたら、顧客とのネットワークが強かった企業がそのネットワークを失ったら、その企業はどういう存在になるでしょうか。

そう考えるとその意味がお分かりかと思います。

 

このように、「知的資産」とは、企業活動を支え企業の利益を生み出し、企業の特徴となる、極めて重要な資産です。
自分の企業がどのような「知的資産」を保持しているのかを知ることは、より良い経営や更なる価値の創造、その他さまざまな場面で役立ちます。

次回は、もう少し具体的に「知的資産」の中身について迫ってみたいと思います。